父は実家で時計店を営んでいます。
時計の販売もそうですが、時計店の仕事のほとんどは時計の修理です。
最近のものはメーカーに修理をお願いするものも多いですが、
昔のものを大事に使っている人は父のような時計職人が修理をします。
そんな実家の時計店がお店を移転することになりました。
お店の近くの再開発事業が進んでいて、お店の土地を手放すことになったからです。
寂しいですが、心機一転頑張ろうと父も今は目の前のことを頑張っています。
そんな折、修理で使っていためっき装置が壊れてしまいました。
「移転しようとしたから俺の仕事も終わりだと思ったのかね」
父は少しさみしそうです。
でも時計が直せるように、めっき装置もきっと直せるはずだと思い、
父には何も言わずに修理できるお店を探し始めました。
装置の写真と型番を控えて、装置を販売しているお店を回りました。
とあるお店にその写真を見せると、「このタイプはもう販売していないし、
メーカーは修理できないね。独自で修理しているお店を探さないとダメだ」
と言われました。でもわずかながら個人商店でも
修理を請け負っているお店があると聞き、そのお店に向かいました。
店主に写真を見せると、たぶん直せるよと言われました。
昔の機械はこのお店に置いてある部品を加工して修理に使うそうです。
父はまだ動く可能性があるんだと喜んでいました。
次の日父と一緒に現物を持ってお店に行きました。
現物を見て、壊れている部品がわかり、数日で直りますよと言われました。
金額も部品代と工賃の数千円で済むとのこと。
父も「この相棒を手放さずにすんだ」と店主にお礼を言っていました。
数日後にお店に行き動作を見ると、ちゃんと立派に動いています!
父は大喜びでした。
その後、お店の移転の作業は着々と行われています。
移転が完了して、父があのめっき装置を使って修理を
している姿を早く見たいです。